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●関前村でタイムダラーを実施して
ヘロン久保田雅子
ヘロン久保田雅子と申します。プログラムに書いてあります様に私は愛媛県の松山市から参りました。松山市というと余りご存知でない方がいらっしゃるかも知れませんが、最近若い人達の間でも俳句が盛んになっており、正岡子規の出身地です。
私は1965年オリンピックの翌年に渡米し、以後18年半アメリカで結婚し、子育てをしたのですが、その中でいろんなボランティアの場面に出会いました。そして、自分自身も子育てをしながらいろいろなボランティアをしてきましたが、その中で1人ひとりの人が違いを作っていくのだという“Make a difference”という言葉を何度も何度も聞いてきました。
今でこそボランティアという言葉が普通に聞かれる様にはなりましたが、86年に帰国した頃はボランティアと言っても「一体何なの?」と、分かってはいるけれども一方的なチャリティの行為、慈善の行為のように思われていた時期でした。これはいけないなと思いながら私自身、高齢社会にも興味がありましたので、田中さんにいろいろ教えて頂きながら、松山市で「長寿社会を考える研究会」というのを作りました。
その研究会では1割のケアを必要とするお年寄りではなくて、9割の元気なお年寄り達が生き生きと生活できる社会を、松山市でどのように作っていったらよいかという話し合いをしてきました。研究会は20人くらいの小さな会なのですが、愛媛県の過疎地域である山間地域や漁村をいろいろ回りまして、そこのお年寄り達がどういう生活をしているか、実際に地域に出かけて行き、地域のお年寄りや若い人達と話をして、私達も学ばせて頂くという事を1O年近くですがやって参りました。
その中で愛媛県の今治市から高速艇で30分くらい行った所に「関前村」という人口1000人で高齢比率42%の村があります。
高齢比率42%と言うと「ええっ」とびっくりしてしまうのですが、実際にその島に行ってみますと、お年寄り達はとてもお元気なのです。そして相互扶助の「結(ゆい)」というシステムがありまして、お互いに助け合い「わたし等の事は心配せんでもいいよ」と言うくらい元気なお年寄りの多い島です。しかし、その関前村で「朝までトーク」で若い人達と話してみますと、その島で威張って元気なのはお年寄りで、若い人達との会話、交流が余りないという事が分かったのです。
そこで私が考えたのは、田中さんを通じて、アナ・ミヤレスさんとお友達になっていましたし、タイムダラーも勉強させて頂いてましたので、相互扶助の精神で異世代間の交流も積極的に出来るタイムダラーを何とかしてこの村に取り入れたいと思いました。
私達の会は小さいのですが、社会福祉医療事業団の助成金事業に、タイムダラーの創始者エドガー・カーン博士とアナ・ミヤレスさんを島に呼ぶという企画を出しましたところ、通りまして、その助成金でお2人を島に呼ぶという事業を致しました。
最初は島の人達も「タイムダラーというのは、今までの相互扶助の「結」と同じではないか。私達はそんな事せんでもいいよ。」と言う人もいたのですが、74才の女性が「私にさせてほしい」手を挙げまして、この村で「グループだんだん」というタイムダラーが

 

 

 

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